課題の背景
「お父さん、そろそろ運転やめない?」
この一言から、多くの家庭で長い交渉がはじまります。高齢ドライバーの事故がニュースになるたび、家族は不安を募らせる。しかし本人にとって車は単なる移動手段ではなく、自立そのものです。実際、運転をやめた高齢者は、やめていない人に比べて外出が減り、要介護状態に至りやすくなることが複数の研究で示されています。
車を手放した先に待っているのは、静かな縮小です。週3回行っていたスーパーが月2回の家族の付き添いになる。通院のたびに誰かに頭を下げる。趣味の集まりから足が遠のく。「迷惑をかけたくない」という気持ちが、外出そのものをあきらめる理由になっていく——。
一方で、地域にはコミュニティバス、乗合タクシー、移動販売、送迎ボランティアなど、移動を支える仕組みが実は点在しています。しかし、それらは断片的で、見つけにくく、そして何より「使うこと=衰えを認めること」という心理的な壁に阻まれています。
私たちエス・エム・エスは、高齢社会の情報インフラを担う企業として、介護・医療の現場に密接にかかわる領域で事業を行っています。一方で、この課題が扱う「移動」は、当社が事業として手がけていない領域です。事業の外側にあるテーマだからこそ、私たちの業界の常識にも、あなたの職種の常識にも縛られない問いの立て方を見せていただきたい——そう考えて、このテーマを選びました。
この課題は「高齢者向け配車アプリをつくってください」という依頼ではありません。移動の喪失がもたらす連鎖のどこに介入するのか、そもそも守るべきは「移動」なのか「移動の先にあった暮らし」なのか——問いの立て直しから、あなたに委ねます。
提出要件
1. 課題設定の説明(必須)
「移動の喪失」の連鎖のうち、誰の・どの瞬間の・どんな問題に焦点を当てたか。なぜそこが本質だと考えたか。対象とする地域環境(都市部/郊外/地方など)の想定も明示してください。
分量目安:プレゼン資料換算で10枚以内程度。量より問題設定の鋭さを重視
2. 提案(必須)
上記の問題に対する体験の提案。アプリ・サービス・仕組み・コミュニケーションデザインなど形式は問いません。「移動手段の提供」以外のアプローチも歓迎します。
提出方法:Figmaリンク/PDF/動画(mp4)のいずれか、または組み合わせ
3. AI活用プロセスの説明(必須)
リサーチ・問題定義・コンセプト立案・制作のどの工程でAIをどう使ったか。うまくいかなかった使い方も歓迎します。
提出方法:AI活用プロセスの説明テキスト(フォーム記入)
評価の観点
- 「移動手段」の一段先まで問題を掘れているか(課題定義力)
- 高齢者本人の尊厳・心理への解像度(「支援される側」として一面的に描いていないか)
- 地域差・生活実態を想像で埋めず、調べた形跡があるか
- AIを「思考の拡張」に使えているか


